フリーランスエンジニアの直接契約(直請け)ガイド|エージェント経由との違いと注意点
フリーランスエンジニア|エンジニア歴14年|正社員 × フリーランス × 技術顧問
フリーランスエンジニアの案件獲得方法は、大きく分けて2つあります。
- エージェント経由:エージェントが案件を紹介し、契約や請求をサポートしてくれる
- 直接契約(直請け):クライアントと自分が直接契約を結ぶ
エージェント経由が主流ですが、フリーランスとして活動を続けていると、知人や元同僚からの紹介で直接契約の話が来ることがあります。また、技術顧問のような役割は直接契約になるケースが多いです。
この記事では、直接契約のメリット・デメリット、エージェント経由との違い、契約で注意すべきポイントを解説します。エージェント経由の案件探しについてはエージェント3社比較で解説しています。
エージェント経由と直接契約の違い
| エージェント経由 | 直接契約 | |
|---|---|---|
| 案件の見つけ方 | エージェントが紹介 | 知人紹介、SNS、直接営業 |
| 契約の相手 | エージェント会社 | クライアント企業 |
| マージン | エージェントの手数料(10〜25%程度) | なし |
| 契約書の作成 | エージェントが用意 | 自分で用意 or クライアントが用意 |
| 請求書の作成 | エージェントの仕組みに従う | 自分で作成・送付 |
| 単価交渉 | エージェントが代行 | 自分で交渉 |
| トラブル対応 | エージェントが仲介 | 自分で対応 |
| 案件の安定性 | 終了時に次の案件を紹介してもらえる | 自分で次を探す |
直接契約のメリット
マージンがない分、手取りが増える
最大のメリットは中間マージンがないことです。エージェント経由の場合、クライアントが支払う金額の10〜25%程度がエージェントの手数料として差し引かれます。
例えば、クライアントがエンジニアに月100万円の予算を確保している場合:
| 形態 | クライアントの支払い | エージェント手数料 | エンジニアの報酬 |
|---|---|---|---|
| エージェント経由(マージン20%) | 100万円 | 20万円 | 80万円 |
| 直接契約 | 100万円 | なし | 100万円 |
ただし、エージェントが提供するサービス(案件紹介、契約管理、請求代行、トラブル仲介)を自分で行う必要があるため、単純に「直接契約の方が得」とは言い切れません。
柔軟な契約条件
エージェント経由だと契約条件がある程度テンプレート化されていますが、直接契約ではクライアントとの話し合いで柔軟に決められます。
- 稼働日数(週2日、月20時間など自由に設定)
- 報酬体系(月額固定、時間単価、成果報酬など)
- 契約期間(1ヶ月単位から年単位まで)
- 業務範囲(開発だけでなく、技術顧問やアドバイザーの形態も)
クライアントとの関係が深くなる
間にエージェントが入らないため、クライアントとの距離が近くなります。経営課題や事業方針を直接聞ける立場になると、技術面だけでなくビジネス面でも貢献できる機会が増えます。
直接契約のデメリット
契約・請求を自分でやる必要がある
エージェント経由なら契約書の雛形も請求の仕組みもエージェントが用意してくれますが、直接契約ではすべて自分で対応します。
- 契約書の作成 or レビュー:契約書チェックリストを参考に、必要な条項が漏れていないか確認する必要があります
- 請求書の発行:毎月の請求書を自分で作成し、クライアントに送付します
- 入金確認:振込が遅れていないかを自分で管理します
単価交渉を自分でやる必要がある
「いくらで受けるか」を自分で決めて、自分で交渉する必要があります。エージェント経由であれば市場相場をもとにエージェントが交渉してくれますが、直接契約ではその役割を自分が担います。
相場感がないまま交渉すると、安く受けてしまうリスクがあります。単価相場の記事で事前に市場価格を把握しておくことが重要です。
トラブル時に仲介してくれる人がいない
報酬の未払い、契約条件の認識違い、業務範囲の拡大など、トラブルが発生した場合に間に入ってくれる人がいません。
エージェント経由であればエージェントが仲介してくれますが、直接契約では自分で交渉し、場合によっては法的手段も視野に入れる必要があります。
注意
直接契約で最も気をつけるべきは報酬の未払いリスクです。特に小規模な企業やスタートアップの場合、資金繰りの問題で支払いが遅れるケースがあります。契約書に支払期日を明記し、遅延時の対応(延滞金など)も定めておくことをおすすめします。
次の案件を自分で探す必要がある
エージェント経由なら、案件が終了する前に次の案件を紹介してもらえます。直接契約の場合、案件終了後に自分で次のクライアントを見つける必要があります。
案件の途切れ = 収入ゼロになるため、直接契約だけに依存するのはリスクが高いです。エージェント経由の案件を軸にしつつ、直接契約の案件を並行して受けるのがバランスの取れた方法です。
直接契約の案件はどこで見つけるか
知人・元同僚からの紹介
直接契約で最も多いのは人づての紹介です。
- 前職の同僚や元上司からの依頼
- フリーランス仲間からの案件共有
- 勉強会やコミュニティで知り合った人からの相談
紹介案件は信頼関係がベースにあるため、条件交渉がしやすく、トラブルも起きにくい傾向があります。
SNS・技術ブログ経由
Xやブログで技術的な発信を続けていると、「うちの開発を手伝ってほしい」という問い合わせが来ることがあります。頻度は高くありませんが、自分から営業しなくても案件が来るのは大きなメリットです。
直接営業
興味のあるスタートアップや企業に対して、自分からアプローチする方法です。ハードルは高いですが、**「この会社のプロダクトに関わりたい」**という明確な動機があれば、意外と話を聞いてもらえることがあります。
参考
直接契約の案件探しは時間がかかります。安定した収入を確保するために、エージェント経由の案件を軸にしつつ、直接契約の機会を並行して探すのがおすすめです。
直接契約で注意すべき契約のポイント
エージェント経由であれば契約書のテンプレートが用意されていますが、直接契約では自分で確認する必要があります。
必ず契約書を交わす
口約束やメールだけで仕事を始めるのは絶対に避けてください。どんなに信頼できる相手でも、書面で契約を交わすことが自分を守る基本です。
2024年11月施行のフリーランス保護新法により、発注者は取引条件の書面等による明示が義務化されています。契約書がなければ、法的にも問題がある状態です。
直接契約で特に確認すべき項目
契約書チェックリストの15項目に加えて、直接契約では以下の点を特に注意してください。
損害賠償の上限 エージェント経由の契約書では上限が設定されていないこともありますが、直接契約では自分で交渉して上限を設定することが重要です。「賠償額の上限は、本契約に基づき支払われる予定の総額を目安とする」のような条項を入れてもらいましょう。
支払いサイトと支払い方法 直接契約では支払条件を自分で交渉します。「月末締め翌月末払い」が標準ですが、相手が小規模企業の場合は「翌月15日払い」を提案してみるのも手です。支払い方法(銀行振込、振込手数料の負担先)も明記しましょう。
知的財産権の扱い 直接契約では知財の帰属が曖昧になりがちです。特に、自分が元々持っているライブラリやテンプレートを使って開発する場合、既存資産の権利は自分に留保される旨を明記しておくことが大切です。
契約の終了条件 「いつでも辞められるか」「何ヶ月前に通知が必要か」を明確にしておきます。フリーランス保護新法では、発注者側からの中途解約は30日前までの予告が義務付けられています。
エージェント経由と直接契約の使い分け
おすすめの組み合わせ
| フェーズ | おすすめの形態 |
|---|---|
| フリーランス1〜2年目 | エージェント経由100%。まず安定した収入と実績を作る |
| フリーランス3年目〜 | エージェント70% + 直接契約30%。紹介案件を少しずつ受け始める |
| 実績が十分に積めた後 | 自分の状況に応じて比率を調整。直接契約を増やすもよし、エージェントの安定性を活かすもよし |
最初から直接契約だけで始めるのはリスクが高い
フリーランスを始めたばかりの段階で直接契約だけに頼るのは、以下の理由でおすすめしません。
- 市場の相場感がないため、単価設定を間違いやすい
- 契約書の知識が不足しているため、不利な条件で契約してしまうリスク
- 案件が途切れたときに次を見つけるネットワークがまだない
- トラブル対応の経験がないため、問題が大きくなりやすい
まずはエージェント経由でフリーランスの基本(契約・請求・確定申告)を体験してから、直接契約に挑戦するのが安全です。フリーランスの始め方はフリーランスの始め方で解説しています。
まとめ
- 直接契約はマージンがない分手取りが増えるが、契約・請求・交渉・トラブル対応を全て自分で行う必要がある
- 直接契約の案件は知人紹介が最も多い。SNSや直接営業もあるが頻度は低い
- 契約書は必ず交わす。特に損害賠償の上限、支払い条件、知財の帰属に注意
- フリーランス1〜2年目はエージェント経由をメインに。直接契約は実績を積んでから
- エージェント経由と直接契約を組み合わせることで、安定性と手取りのバランスが取れる
エージェントへの登録はエージェント3社比較から、移行計画は会社員→フリーランス移行ロードマップをご覧ください。
フリーランスエンジニア|エンジニア歴14年・100超のプロジェクト経験|Next.js / Laravel / AWS / GCP / Firebase / Supabase / OpenTelemetry
正社員 × フリーランス × 技術顧問のハイブリッド型で活動中。 得意領域はアプリケーション設計と、技術 × 戦略を一気通貫で回す 0→1 の立ち上げ。1→10 のブラッシュアップも数多く経験してきた。 営業出身からエンジニアに転身し、SES・受託・自社サービス・スタートアップ、合同会社の経営まで全部経験。省庁・金融・医療など業界も選ばず、14年で100超のプロジェクトに関わっている。エンジニア採用の経験もあり、採用する側の視点も持っている。