フリーランス実用2026年3月26日2026年8月20日12分で読める

フリーランスエンジニアの資金計画|独立前にいくら貯めるべき?手取りのリアルを解説

Takabo
Takabo

フリーランスエンジニア|エンジニア歴14年|正社員 × フリーランス × 技術顧問

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「フリーランスは稼げる」とよく言われます。

単価相場の記事にまとめたとおり、エンジニアの月単価は経験3〜4年で55〜65万円、5〜7年で75〜85万円が目安です。

でも、年収と手取りは全く違います

会社員なら税金も社会保険も給料から天引きされるので意識しませんが、フリーランスは全て自分で払います。独立前にこの「お金のリアル」を把握しておかないと、「稼いでいるはずなのにお金がない」という状態に陥ります。

この記事では、フリーランスエンジニアの資金計画を具体的な数字で解説します。

独立前にいくら貯めておくべきか

結論:最低3ヶ月分、理想は6ヶ月分の生活費

マネコミ!の調査によると、フリーランスになった先輩200人のうち最も多かった貯金額は「0〜10万円未満」で、約半数が100万円未満でした。ただし、貯金額0〜10万円未満の53.8%が実家暮らしだったのに対し、1,000万円以上の人はひとり暮らし・夫婦暮らしが多い傾向がありました。

出典: マネコミ!「先輩200人に聞くフリーランスになるためのマネー計画」

つまり、生活環境によって必要な貯金額は大きく異なります

生活環境最低ライン理想
実家暮らし50万円100万円
ひとり暮らし(家賃8万円)100万円200万円
家族あり(家賃12万円)200万円400万円

なぜこれだけ必要なのか:支払いサイトの罠

フリーランスの報酬は、働いた月の翌月以降にまとめて振り込まれます。4月に働いた分の報酬が届くのは、早くて5月中旬、遅ければ6月末です。サイトはエージェントによって幅があり、15社の比較では翌月15日払いから翌月末払いまで分かれています。

さらに悪いケースもあります。

支払いサイト4月稼働分の入金日無収入期間
当月末締め翌月末払い(30日)5月末約2ヶ月
当月末締め翌々月末払い(60日)6月末約3ヶ月

60日サイトの場合、4月1日から稼働しても最初の報酬が入るのは6月末。4月・5月・6月の3ヶ月間は貯金を切り崩して生活することになります。

翌々月末払いは、条件によっては法律の期日を超えます

フリーランス法4条1項は、報酬の支払期日を「役務の提供を受けた日から起算して60日以内」と定めています。起算点は締め日ではなく、実際に働いた日です。

当月末締め翌々月末払いだと、4月1日に働いた分の支払いは6月末で約90日後になります。「翌月末払い」でも、月の初日に働いた分は受領日起算で61〜62日になることがありますが、これは公正取引委員会のQ&A(Q48)で「2か月以内として運用する」とされ許容されています。

ただし、翌々月末払いが直ちに違法というわけではありません。エージェント経由の案件のように、発注者がエンド企業から受けた仕事を再委託している場合、契約条件を明示する際に「再委託である旨・元委託者名・元委託業務の対価の支払期日」を伝えていれば、支払期日は元委託支払期日から30日以内でよいとされています(4条3項)。エンド企業が翌月末払いなら、翌々月末払いはこの範囲に収まります。

確認すべきは日数そのものではなく、再委託である旨と元委託支払期日が明示されているかです。明示がないまま翌々月末払いになっている場合は、4条1項の60日を超えていないか聞いてみてください。

なお、この義務を負うのは「特定業務委託事業者」で、従業員を使用している個人か、役員が2人以上いるか従業員を使用している法人です(2条6項)。役員が2人以上いれば従業員がゼロでも対象になります。

出典: 公正取引委員会「フリーランス法に関するQ&A」

注意

支払いサイトはエージェントや案件ごとに異なります。契約前に必ず確認しましょう。掲載15社では15日サイト(翌月15日払い)から30日サイト(翌月末払い)まで分かれていて、案件数の多い大手が15日サイトということもあります。中間に入る企業が多いほどサイトが長くなる傾向があります。支払いサイトの確認方法は契約書チェックリストでも解説しています。

どうしても支払いサイトが長い場合の選択肢

完全に独立してしまった後で支払いサイトが60日だった場合、ファクタリングという手段があります。ファクタリングとは、保有している売掛金(請求書)をファクタリング会社に買い取ってもらい、入金を前倒しする仕組みです。契約の形式は債権の売買です。ただし、買い戻し義務(償還請求権)が付く契約は実質的な貸付とみなされる場合があり、金融庁も「ファクタリングを装った貸付」への注意を呼びかけています。契約前に、償還請求権の有無と、相手が貸金業登録を要する取引でないかを必ず確認してください。

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個人事業主でも利用可能なサービスとして、PRえんナビ などがあります(公式サイトでは「最短即日」「24時間365日受付」と表記されています)。あくまで「困ったときの選択肢」の一つです。

なお手数料は、利用者と買取業者だけで契約する2社間ファクタリングで10〜20%程度が目安とされます(取引先も含む3社間では1〜9%程度)。支払いサイトを1〜2ヶ月縮めるための費用と考えると、年率に換算した負担は決して小さくありません。まずは契約前に支払いサイトを確認し、資金が足りなくなる状況を作らないことが先です。ファクタリングは最後の手段として頭の片隅に置いておく、くらいがよいと思います。

会社員のまま始めるなら、資金面のリスクは大幅に下がる

会社員を辞めずに副業としてフリーランス案件を受ける場合、支払いサイトの問題はほとんど発生しません

  • 本業の給料で生活費はカバーされているため、報酬の入金が遅れても困らない
  • フリーランスの報酬は生活費の上乗せになる
  • 社会保険も本業側でカバーされる

ただし、副業の**所得(収入から経費を引いた金額)**が年間20万円を超えると確定申告が必要になり、所得税・住民税の追加納付が発生します。「副業で稼いだ分は全部使える」わけではないので、納税資金として副業収入の2〜3割は確保しておくことをおすすめします。

副業フリーランスの始め方でも解説していますが、リスクを最小限に抑えてフリーランスを始める方法として、副業スタートは資金面でも合理的な選択肢です。

年収別の手取りシミュレーション

「月単価70万円で年収840万円」と聞くと夢がありますが、そこから税金と社会保険を引いた手取りを知っておく必要があります。

前提条件

  • 個人事業主(法人化なし)
  • 青色申告(65万円控除)
  • 経費は年間50万円(PC・通信費・交通費など)
  • 配偶者・扶養なし
  • 東京都在住

年収別シミュレーション

年収(売上)経費所得所得税住民税個人事業税国民健康保険国民年金税・社保を引いた額経費も引いた手元
500万円50万円385万円約25万円約39万円約8万円約36万円約20万円約372万円約322万円(64.4%)
700万円50万円585万円約55万円約59万円約18万円約56万円約20万円約492万円約442万円(63.1%)
900万円50万円785万円約95万円約79万円約28万円約77万円約20万円約601万円約551万円(61.2%)
1,100万円50万円985万円約150万円約99万円約38万円約89万円約20万円約704万円約654万円(59.5%)

一番右の列が実際に生活へ回せる金額です。経費50万円は税額を下げてくれますが、同時に実際の支出でもあるので、手元に残る額からは引かれます。「手取り」として語られる数字がどちらを指しているかは、記事や試算によって違うので注意してください。この記事では以降、経費を引いた後の金額で話を進めます。

出典: ペイッター「年収800万円になったフリーランスの税金はどうなる?」テックストックMAGAZINE「フリーランスの手取り月収&年収は?」を参考に算出

参考

上記はあくまで概算です。実際の税額は経費の金額、お住まいの自治体の国民健康保険料率、iDeCoやふるさと納税などの控除によって変わります。正確な計算には税理士への相談をおすすめします。節税の基本は確定申告ガイドで解説しています。

会社員との手取り比較

「年収700万円」でも、会社員とフリーランスでは手取りが異なります。

項目会社員(年収700万円)フリーランス(売上700万円)
社会保険約100万円(会社が半額負担)約76万円(全額自己負担)
所得税 + 住民税約80万円約114万円
個人事業税なし約18万円
手取り(概算)約520万円約492万円

同じ「700万円」でも、税・社会保険だけで比べるとフリーランスの方が約28万円少ない。さらに経費50万円を実際に支出するので、手元に残る額で揃えると約520万円 対 約442万円で、差は約78万円になります。

差の中身を分けて見ると、通説とは少し違う絵が出てきます。

内訳会社員フリーランス
社会保険料約100万円約76万円−24万円(フリーランスが安い)
所得税・住民税約80万円約114万円+34万円
個人事業税なし約18万円+18万円
経費会社負担が多い約50万円+50万円

「フリーランスは社会保険が重い」と言われますが、この年収帯では社会保険料そのものは会社員より安く出ます。国民健康保険と国民年金には上限や定額部分があるためです。差を作っているのは、給与所得控除がないぶん課税所得が大きくなることと、個人事業税が加わること、そして経費を自分で払うことの3つです。

もちろん会社員は保険料を会社と折半しているので、会社が負担している分(約100万円)まで含めれば話は変わります。ただ「自分の口座から出ていく額」で比べるなら、上の表のとおりです。

会社員のまま副業する場合の圧倒的メリット

会社員を続けながら副業でフリーランス案件を受ける場合、社会保険は本業の会社がカバーしてくれます。

項目完全独立会社員 + 副業
社会保険全額自己負担(国保+国民年金)本業の会社が半額負担(社保)
副業収入の税金所得税 + 住民税 + 個人事業税所得税 + 住民税のみ(※)
支払いサイトの影響生活費に直結影響なし
無収入リスクありなし

※ 副業の所得が290万円を超えると個人事業税がかかります

つまり、同じ月単価70万円の案件でも、会社員のまま受ける方が手取りが多いのです。社会保険料の差だけで年間数十万円変わります。

月のキャッシュフローを把握する

フリーランスとして安定して活動するために、月単位のキャッシュフローを把握しておきましょう。

月単価70万円(年収840万円)の場合

項目月額
売上700,000円
所得税(予定納税・確定申告分を月割り)-約72,000円
住民税(年4回or毎月)-約50,000円
国民健康保険(月額)-約50,000円
国民年金-約17,000円
個人事業税(8月・11月分を月割り)-約21,000円
経費(PC・通信・交通費等)-約40,000円
生活に使える金額約450,000円

ここから家賃・食費・光熱費などの生活費を引いた残りが、貯蓄や投資に回せる金額です。上の年収別シミュレーションを売上840万円あたりで見た金額とおおむね合います。国民健康保険は自治体と所得で動くので、幅を持って見てください。

システム開発の報酬は、原則として源泉徴収されません

所得税法が源泉徴収の対象として列挙しているのは、原稿料・講演料・デザイン料・士業の報酬などで(所得税法204条1項)、システム開発やプログラム作成は含まれていません。経営コンサルティングは「企業診断員」として対象になります(所得税法施行令320条2項)。

ただし実務では、条文どおりに運用されているとは限りません。判断が難しいことを理由に、対象を広めにとって源泉徴収している支払側があります。

INTLOOPが公開している資料が分かりやすい例です。同社はコンサルティング業務について「源泉徴収有無の線引きがしにくい部分を含みます。税務調査等で指摘を受けるリスクを勘案したため、これまでは源泉徴収対象として経理処理しました」と説明したうえで、税務署に相談した結果「自社のコンサルティング業務は源泉徴収の必須対象ではないことが判明した」として取扱いを改めています。

ここで大事なのは、全部やめたわけではないことです。同じ資料に「すべての案件で源泉徴収がなくなるという理解で合っていますか?」という想定質問があり、答えは「いいえ。業務委託内容を勘案して、源泉徴収有無を判定させていただきます」。対象業務については引き続き源泉徴収する、と明記されています。実際、同社がエンジニア向けに運営するTech Stockのよくある質問では、現在も「源泉徴収の対象となる支払いには、フリーランスのITエンジニア/IT関連業務の報酬も含まれます」と案内されています。

**効いてくるのは契約書に書かれた業務名です。**同じ資料には、委託業務の内容変更により「ITコンサルティング」が「経営コンサルティング」になった場合、源泉徴収不要から対象に変わる、という例が挙げられています。同じ人が同じ相手と取引していても、案件ごとに源泉徴収の有無が異なることがあるとも書かれています。

やることは1つです。**支払通知書で天引きの有無を確認し、契約前に「この案件は源泉徴収の対象ですか」と聞く。**天引きされても確定申告で精算されるので最終的な税額は変わりませんが、その年の資金繰りには効いてきます。

出典: INTLOOP「源泉徴収の取扱い変更に関するFAQ」(PDF)TECH STOCK「よくある質問」(いずれも2026年8月確認)

見落としがちな出費

月々の固定費以外にも、以下の出費を忘れがちです。

  • 確定申告の納税(3月): 所得税の確定申告で追加納税が発生することがあります
  • 住民税の一括納付(6月): 前年の所得に基づくため、独立初年度は会社員時代の所得で計算された金額が来ます
  • 国民健康保険の上限: 年収が上がると保険料も上がりますが、賦課限度額があります。40歳未満は年96万円(基礎67万円+後期高齢者支援金等26万円+子ども・子育て支援納付金3万円)、40〜64歳は介護納付金17万円が加わって年113万円が上限です(国民健康保険法施行令29条の7)。保険料率は自治体ごとに異なります
  • 個人事業税(8月・11月): 事業の所得(青色申告特別控除を差し引く前の金額)が事業主控除290万円を超えると、超えた部分に原則5%(地方税法72条の49の14、72条の49の17)。ただし課税されるのは地方税法が定める法定業種に限られ、ソフトウェア業やシステムエンジニア業は法定業種として明記されていません。実務上は「請負業」として課税される例が多い一方、業務内容によって扱いが分かれます。開業した年は事業主控除290万円が月割になります。判断に迷う場合はお住まいの都道府県税事務所にご確認ください
  • 消費税(インボイス対応の場合): 課税事業者の場合、消費税の納税義務があります

独立を検討している人のためのチェックリスト

完全独立する場合

  • 最低3ヶ月分(理想は6ヶ月分)の生活費を貯金した
  • 支払いサイト(30日 or 60日)を確認した
  • 国民健康保険の保険料を自治体のWebサイトでシミュレーションした
  • 確定申告の基本を理解している(確定申告ガイド
  • クレジットカード・賃貸契約は会社員のうちに済ませた
  • エージェントに登録して案件の目処がついている(エージェント3社比較

会社員のまま副業で始める場合

  • 会社の就業規則で副業が禁止されていないか確認した
  • 確定申告が必要になることを理解している(副業所得20万円超)
  • 住民税の「普通徴収」を選択する方法を知っている
  • 本業に支障がない稼働量を見極めている

副業フリーランスの始め方については副業フリーランスの記事で詳しく解説しています。

まとめ

  • 独立前に最低3ヶ月分、理想は6ヶ月分の生活費を貯めておく
  • 支払いサイト(翌月末 or 翌々月末)で無収入期間が変わる。必ず確認する
  • 年収700万円の場合、税・社会保険を引くと約492万円(売上の約70%)。そこから経費50万円を実際に支出するので、生活に使えるのは約442万円(約63%)
  • 同じ年収なら、会社員の方がフリーランスより手取りが多い(社会保険の折半があるため)
  • 会社員のまま副業で始める場合、資金面のリスクを小さく抑えられる
  • 月のキャッシュフローと年間の臨時出費(確定申告・住民税・事業税)を事前に把握しておく

まだエージェントに登録していない方は、フリーランスの始め方から読んでみてください。

Takabo
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フリーランスエンジニア|エンジニア歴14年・100超のプロジェクト経験|Next.js / Laravel / AWS / GCP / Firebase / Supabase / OpenTelemetry

正社員 × フリーランス × 技術顧問のハイブリッド型で活動中。 得意領域はアプリケーション設計と、技術 × 戦略を一気通貫で回す 0→1 の立ち上げ。1→10 のブラッシュアップも数多く経験してきた。 営業出身からエンジニアに転身し、SES・受託・自社サービス・スタートアップ、合同会社の経営まで全部経験。省庁・金融・医療など業界も選ばず、14年で100超のプロジェクトに関わっている。エンジニア採用の経験もあり、採用する側の視点も持っている。

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